2010-03-19

トヨタ社長の個人ブログへのコメント

ドライバーモリゾウさん(こと、トヨタ社長豊田章男氏)がトヨタのプリウス等のリコール関連問題にふれて、以下のように述べている。
トヨタは、これまで、お客様第一の理念のもと、皆さまに愛されるクルマづくりに真剣に取り組んできました。しかし、ここ数年の急成長の中、「お客様の声を聞く姿勢がおろそかになっていたのではないか?」という世間の声に対しては、真摯に受け止め、謙虚に反省し、誠実に対応していかなければならないと思っています。
今一度、原点に返って、安全で魅力ある“いいクルマ”をつくること、そして、「クルマづくりを通じて社会に貢献すること」にまい進してまいります。
お客様・クルマファンとともに|ドライバーモリゾウのBLOG:http://gazoo.com/G-blog/Driver/196748/Article.aspx
以上のことについて「しっかりと頑張ってくださいね」、ということなのだが、もうすこし、踏み込んでコメントしてみたいと思う。この問題の流れの中で、技術担当者の記者会見の際、ブレーキの効きについての感覚的な問題は、個人差があるとして、トヨタのクルマ作りのポリシーとして問題はない旨の発言があったように記憶している。おそらく、トヨタ社長のコメントは、この言葉も意識していると思われる。同じ点について「失敗学のすすめ」の著者である、畑村洋太郎工学院大学教授は、以下のように述べる。
ソフトウェアの場合、作りこむ上でのミスやマズさはありうる。けど、今回の問題については、トヨタは「これでは事故は起こっていない」と言わず、「感覚の問題」といってしまった。そういう議論になったことは本当に残念なことだ。
トヨタの激震~「リコール」の発想転換をしなければ国益を害する - Infoseek 内憂外患:http://opinion.infoseek.co.jp/article/761/2
永井正夫工学院大学教授は、最近のクルマの安全をめぐるの技術について、以下のように述べる。
安全技術については、いままではエアバッグなど「ぶつかってもいい」ような構造にする・・・他方、技術においては、「衝突安全性の向上」という発想から、「予防安全技術の向上」に視点が向かっている。・・・ABSについては、制動距離を短くする装置と思われがちだが、そうではない。あくまで車輪がロックしないようにしてハンドルで事故を回避する、という目的のために作られている。横滑り防止(ECS)が付いたことで、より事故回避能力が向上された。・・・ハイテク機器になりつつあるいま、車の安全性は車のトータルの性能によって維持される。・・・例えば「ドライブレコーダー」の活用により、「ヒヤリ、はっと」した状況やEDR(エアバッグを利用した回数を記録する)を記録することで、運転者のクセをシステムに記憶させ、個々のタイミングにあった予防をすることができれば交通事故そのものが劇的に減ると思う。
トヨタの激震~「リコール」の発想転換をしなければ国益を害する - Infoseek 内憂外患:http://opinion.infoseek.co.jp/article/761
しかし、もう一歩踏み込むと、そして、極論すると、クルマは、安全のために人間を自動車のひとつの部品とすべく技術革新が進められているといえよう。つまり、部品としての人間の誤差を吸収してしまうかのようなシステムである。人間行動の多様性を考えに入れると、それなら、無人化してしまうというところまで行くだろう。事実、トヨタは愛知万博で無人のガイドウェイバスを運行したことがある。
トヨタ自動車:ニュースリリース:http://www2.toyota.co.jp/jp/news/05/03/nt05_0310.html
TOYOTA ~企業情報-愛・地球博への取組み~:http://www.toyota.co.jp/company/expo_2005/imts_fchv/imts_fchv_01.html

現代社会は、フーコーの言うように中央監視型社会になり、人間行動を常時監視し、事故を起こそうと思っても起こせない、死のうと思っても死ねない社会にひたすらむかっているのであろうが、しかし、それは、人間にとっての「喜び」や「感動」、「興奮」を奪うようでは、何もならないのではないか。トヨタ社長にユーザの声を聴くというなら、少数者の意見も聞いて欲しいと思う。

わたしは、以下のように別のブログで、トヨタの四輪駆動車に関連して書いたことがある。
(わたしは、)オーストラリアでランドクルーザーを使って何度も川渡りをした。また、ユーカリの林の中を道を作りながら走った。ものすごいディープサンドの海岸や川辺を走った。とんでもないぬかるみも走った。ラリーではなく、必要があって走った。そうした中で、toyotaは安全に私たちを運んでくれた。多少の不安があっても、このクルマであれば大丈夫と思えた。
これから技術革新が進みコンピュータの固まりのようになったクルマは同様の信頼感を与えてくれるのだろうか。多少、不安な気持ちである。また、過酷な状況でクルマを運転することは実に楽しかった。自分自身のクラッチワークやハンドリングでクルマが動いているという実感を感じる事ができた。猛烈に重いハンドルやペダルと格闘したとしても。
ロボットと化したクルマは、私たちに運転する喜びを与えてくれるのだろうか。
四輪駆動車について - 読書と夕食:http://blog.goo.ne.jp/sig_s/e/4851d04559d464815334e1bd5f5e0bf9

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